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不動産投資

2018.10.4

いつも粛々と自分を迎える妻がいない……浮かれた気分と裏腹な不安 Vol.4

妻を裏切った罪悪感が芽生え、男は思案を巡らせる

出勤して自分の席に着くなり、俺は深いため息をついた。

完全に、いつもの生活リズムが崩されている。由以子がいないというだけで……本当は、「だけ」ではなく何か大きな事件が隠されているかもしれないのだが……俺はいつもの調子を狂わされ、出勤した時点でどっと疲れが出てしまった。

「おはよう徹。どうした、元気なさそうだな」

そう声をかけてきたのは、勇作だ。

爽やかな笑顔を向ける勇作と自分のコンディションのギャップに俺は若干イラつき、

「そういうお前はいつにも増して元気そうだな」

と、浮かないテンションで勇作に言葉を投げる。

すると勇作は、

「わかるー?実は、ちょっといいことがあってさー」

と、言葉の端々に花が咲いたような陽気さで声を上ずらせた。

俺は、その勇作の様子にさらにいら立ちを募らせ、

「お前はいいな気楽で」

と、ため息交じりに行って机に突っ伏した。

「何があったか知らんが、まぁ頑張れや」

勇作は、俺の様子を不思議がることもなく俺の肩をポン、と叩いて去っていった。

 

日中も全く仕事が手に着かず、自分が不動産投資をしているマンションの管理会社からメールが来ているのに気づいても、俺は読む気にもなれなかった。そして俺は、この不安感を拭うように寿美香に『元気?』などとたわいもない内容のLINEを送った。

もちろん、由以子がいなくなった状況を解決できるものでは全くないが、寿美香とのやりとりで少しでも心を安らげようとしたのだ。

しかし、寿美香は基本的に仕事中にメッセージを送ることがないので、返信が来ないだけではなく既読にもならない。

そりゃそうか、と思いながら、俺はスマホをデスクに置いた。

昨日、俺が寿美香との時間を楽しんでいたとき、由以子の身に何かが起きた。

そのとき、俺の浮かれた気分とは裏腹に由以子は怖い思いをしたかもしれない。今も何らかの危険にさらされているかもしれない。もしくは、どこかで傷を負っていることも考えられる。

そこで俺は、由以子に対して罪悪感を覚えた。昨日は由以子のことなど頭の隅に押しやって寿美香のことだけを考えていたのに、全く勝手なものだと自分を責める。

いつも由以子は、俺のために家を守って俺のために何でも尽くしてくれた。その由以子を、俺は裏切ったのだ。

にもかかわらず、寿美香と関係を持ったこと自体を後悔するまでの思考は俺には働かなかった。ただ、自分の中の罪悪感だけに襲われて頭がいっぱいになっていた。

とはいえ、もしかしたら俺が今日帰るころには、由以子は何事もなかったような顔をして夕食を作っているかもしれない。でも、もし帰っても由以子がいなかったら、俺はどうするべきか。

とりあえず警察に連絡して、家の中に由以子が姿を消した手掛かりを探して、それから近所を回って……しかし、近所の人に自分の妻がいなくなったことを知られて大ごとになるのは避けたい。

そんなことをぐるぐる考えていたら、あっという間に終業時刻になった。

片付けなければならない仕事は目の前に山積していたが、今日はどちらにしろ手がつけられないと思ったので、俺はそのまま会社を後にすることにした。

 

Vol.5 状況を受け入れられない男が直面した衝撃の現実、そして男の顛末は……。

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