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2018.10.4

いつも粛々と自分を迎える妻がいない……浮かれた気分と裏腹な不安 Vol.4

前回までのあらすじ

徹は合コンで出会った寿美香とのデートを楽しみ、2人はそのままホテルへなだれ込んで互いを求めた。そして情事を楽しんだ徹は、刺激的な寿美香との時間の余韻に浸りながら帰路に着く。家に着くと、寝ているだろうと思っていた妻・由以子の姿が見えないことに気づく徹。いつもとは違う状況に、焦りを隠せない。

 

妻が家にいない初めての朝……そこで男は何を思うか

 

由以子は、結局翌朝になっても戻ってこなかった。

俺は昨晩、結婚してから初めて由以子がいないベッドに入った。妻がどこかに消えてしまった状況でも、やはり思い出すのは寿美香との情事だ。その余韻の甘さと、どこか自分を責める気持ちがせめぎ合いながら、俺はいつの間にか眠りについていた。

実際のところ、由以子がいないと勘違いしているだけで本当はトイレかどこかに行っているだけかもしれないし、家のどこかにはいるんじゃないかとも考えていた。なぜなら、由以子が俺のことを放ってどこかに行くなどということは、これまでの由以子の行動からは考えられないためである。

また由以子は計画性に優れた女だ。買い物もいつも先を見据えて買いだめをしているだけではなく、食料や日用品は切らすことがないよう常に予備を大量にストックしているため、何かが足りなくなったから夜中にコンビニに出かけるといったこともないだろう。

 

そんなことを考えながら、俺は翌朝目を覚ました。寝ぼけ眼ながら、俺はすでに由以子が隣で寝息を立てているものという、根拠のない自信を持っていた。

そして自分の隣に目をやると、そこに由以子の姿はない。

しかし、もしかしたらすでに起きて朝食の準備をしているのではないかと考え、俺はダイニングに出向いた。

ドアを開けるとそこは静まり返っていて、シーンという音が耳を貫くような感覚を覚える。そう、やはり由以子はキッチンにもダイニングにもいないのだ。

俺はここに来て、初めて危機感を覚えた。

由以子に何かあったのかもしれない。どこに行ったんだ。何か事件に巻き込まれたのか……そんなことが、ぐるぐると頭を巡る。いずれにしろ、いつも家にいた由以子が朝になっても戻っていないのは、ゆゆしき事態だと思った。

 

そんな頭の中でも、会社に行かなければならないという頭は働くものだ。とにかく、朝食を食べてから準備しようと、俺は慌ててキッチンに入ったが、どこに何があるのか全くわからない。

冷蔵庫を開けると卵と冷やご飯があるのを見つけたので、俺はとりあえずご飯を電子レンジで温めて卵をかけてかっ込んだ。

そして、胸の中のもやもやした気分を押し殺すように準備を整え、スーツに袖を通して玄関で靴を履いた。

このとき、いつもなら

「行ってらっしゃい」

「行ってくるよ」

という、定型通りの会話が交わされるはずだった。

しかし、昨日まであれだけ嫌気が差していた当たり前の日常がそこにないことに、俺はいささか不安を覚える。いつも通りのことがいつも通りに行われないということが、こんなに心もとないものなのかということに、俺は初めて気づいた。

 

Next 妻を裏切った罪悪感が芽生え、男は思案を巡らせる

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