不動産投資

妻以外の女との甘い時間、そして男が妻のもとに戻ると…… Vol.3

余韻に浸りながら平凡な家に帰る……そこに待っていたものとは
寿美香との熱いひとときを過ごした後、本当はそのまま夜を明かしたかったのだが、レストランの予約時間にまだ間に合うことに気づき、俺たちはレストランに出向いた。
滅多に食べることのないフレンチのコースを目の前にしても、俺は高揚する気分を抑えることができない。そのため、料理の味はほとんどわからなかった。それでも寿美香が、
「おいしい……こんなの食べたことない」
と嬉しそうに食事をしている様子が微笑ましく、この穏やかな時間を堪能していた。
さっきまで激しく乱れていた女が、今こうして清楚な笑みを浮かべているのを見て、俺の優越感はとどまるところを知らない。
これが、女との有意義な時間の過ごし方なのではないかと俺は思う。
考えると、由以子は控えめで地味なイメージそのままで、デートのときもベッドの上でも印象が変わることがなかった。そのため、女が持つ二面性を楽しむことができなかったのだ。
なら、なぜ結婚したのかと問われそうだが、答えは簡単だ。安定した生活を求める一心だった。
しかし、その安定した生活に飽きてしまった自分がここにいる。そして、寿美香との時間はその安定をいろいろな意味で覆す刺激的なものだと、今日実感したのである。
食事を終えた後、俺は寿美香を家まで送り届けようとしたが、寿美香はそれを制した。寿美香いわく、
「だって、家まで来てもらったらあがってってほしくなるでしょ」
とのことだ。どこまでも、男を煽ってじらすのがうまい女だと思った。
そして俺は寿美香が夜の街に消えていくのを見送り、あの平凡な家への帰路についた。
とうとう、俺は寿美香を手に入れてしまった。これは、刺激を求めて始めた不動産投資よりもよっぽど刺激的で、癖になりそうだ。
時計を見ると、時刻はもうすぐ日を超えるかというところを指している。家に着くころには、さすがに由以子は床についているだろうと考えた。それなら、この高揚した気分のまま由以子と顔を合わせなくても済む。俺は、少し安堵の気分を覚えた。
そして帰宅し、真っ暗な玄関をあがって静まり返った空気の中リビングに向かう。やはり、由以子は寝ているようだ。
リビングをひととおり見回した後、俺は今日の寿美香との情事の痕跡を消すべくバスルームに向かい、ゆっくり湯船にでも使って余韻を楽しもうと思った。
バスルームのドアを開けると、バスタブには湯が張られておらず空っぽの状態だった。俺は、その状況に少し違和感を覚える。
普段なら、俺の帰りがどんなに遅くなってもバスタブにはなみなみとお湯が張られており、常に適温に保たれているのだ。それはもちろん、俺が帰ってからすぐに入浴できるようにとの由以子の配慮だ。
その由以子の行き届き過ぎた配慮が、今夜はなされていない。その状況を見て、何かあったのではという考えが頭をよぎった。
俺は、すっかり脱いでしまった服を着直し、寝室に向かいドアを開ける。
すると、ベッドには由以子の気配はなくもぬけの殻だった。
由以子がいない。
俺は、ついさっきまでの寿美香との時間の余韻を頭の隅に置きながらも、不穏な空気を感じずにいられなかった。
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