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不動産投資に関する情報メディア

連載

2018.9.9

すっかり上司の下僕と化したが、そこに生じた疑問とは vol.3

前回までのあらすじ

晴人の同期・修吾が交際相手である晴人の直属の上司・祥子との将来のために不動産投資をしていることに感銘を受けた晴人は、資金が少なくて済むマンション一室投資から始めることに。そして、ひょんなことから自分がオーナーであるマンションを訪ねると、そこには干物状態かつゲーム廃人の祥子がいた。祥子は晴人の不動産投資の事実を会社に言わない代わりに、自分の実態を黙っておくよう晴人を脅す……。

土曜日。たまの休日だからといって昼近くまで惰眠をむさぼっていた晴人は、眠い目をこすりながら冷蔵庫を開け、コップに水を入れて一気に飲み干した。

ふぅ、と一息ついた晴人は、ソファに自分の体重を預ける。

しかし、晴人の頭には一抹の不安が頭をよぎっていた。

最近、休日の午前中から昼前にかけて、ある電話がかかってくるようになったのだ。

(もしかして……今日も来るのかな……)

晴人はそう思いながらびくついていると、突然スマホの着信音がけたたましく鳴った。

(うわ……来た……)

晴人がため息をつきながら、恐る恐るスマホを手に取って電話に出る。

「……もしもし」

晴人が力なく応答すると、

「真島ぁ?いや違った、オーナーさーん?ちょっとさぁ、お腹空いたから何か作りに来てくれなーい?」

と、澄んだ声ながらどこか圧力を感じさせる祥子の声が晴人の耳に響いた。

「……またですか、課長……」

わかっていたこととはいえ、晴人はまた大きくため息をついた。すると、

「は?何ため息ついてんの?上司の命令が聞けないって?とんだ非礼者がここにいるわね」

と、電話越しの祥子は矢継ぎ早にまくしたてる。

「いえ、そういうわけでは……」

晴人が弁解しようとすると、

「いーのかなー?『私んちのオーナーさんってポンコツなんですよー、うちの課にいるんですけどねー』とか、世間話で部長に喋っちゃおうかなー」

と、すっとぼけた調子で祥子が遠回しに圧をかける。

晴人は先日、自身がオーナーとなったマンションの部屋を訪ね、そこに祥子が住んでいることを知ってしまった。そして祥子が会社のクールな顔とは全く違っていわゆる干物女子であったこと、さらにはなかなかのレベルのゲーム廃人だったことも目の当たりにしたのである。

そんな秘密を晴人に知られてしまった祥子は、すっかり開き直って休日の度に晴人を呼びつけ、食事を作らせたり掃除をさせたりと、自分にできない家事全般を任せるようになった。

(確かに会社にいるときは生活感ない感じだけど……こっちのタイプの生活力のなさだったとは……)

晴人は、これまで祥子に用事を言いつけられるたび、祥子が料理も掃除もからっきしできず生活力がゼロであることを痛感していた。

そして、なぜ晴人が祥子の半ば横暴な命令を断れないかというと、祥子の生活ぶりの秘密と晴人の不動産投資の秘密をお互いにバラさないよう協定が結ばれたことだけではない。

それ以上に、今まで会社で晴人が恐れおののいていた上司の祥子が、その立場をちらつかせて晴人を脅しにかかっているのだから、晴人に反発の余地はないのだった。

そして、いつものごとく祥子に脅されている晴人は、

「ち、ちょっと待ってください課長!」

と祥子に精いっぱいの抵抗をした。

すると電話越しの祥子は、

「あ?何よ、いっちょ前に私の話をさえぎるの?ぐだぐだ言ってる暇があったら、さっさと来なさいよね!」

と早口で言い、プツッと一方的に電話を切った。

「はぁ……今日は何作ろ……」

晴人はすっかり観念し、今日祥子の家で振る舞う昼食のメニューについて頭を巡らせた。

 

ピンポーン。と、晴人は「メゾン・ド・プレシャス」205号室のインターホンを押す。

すると中からガチャッとロックが解除され、

「おっそーい真島ぁ!」

と、若干ろれつが回らない様子の祥子がドアから顔を出した。

「課長……また昼から飲んで……」

と晴人がつぶやくと、

「は?あんたに説教される筋合いないんだけど」

と祥子が座った目で晴人をにらみつける。

「とりあえずさっさと飯作んなさいよ。今日は何?」

せっかく他人に昼食を作ってもらうのに、ありがたみのかけらも感じていないかの対応をする祥子に、晴人は素直に

「えっと……焼きそばです」

と答えた。

「えー何その平凡なヤツー。さては手ぇ抜いてるでしょ?何かもっとおんなじ麺でもさぁ、トマトのカッペリーニとかないわけ?」

と祥子は不満げに口をとがらせる。

「無理ですよ。僕、いっつも大したもん作れないって言って……」

そう、晴人は1人暮らしであるが、世間一般の男性と同様に自分が腹を満たせればいいくらいの料理の腕しか持っていない。トマトのカッペリーニと言われても、そもそもカッペリーニが何なのか晴人には皆目見当もつかないのである。

「もういいわ。私今ギャルゲーの攻略中だから、いいとこになる前に作ってよね」

そう言い捨てて、祥子は晴人を部屋に入れた後さっさとパソコンデスクに戻って行った。

焼きそばに入れるキャベツを刻みながら、ポップなBGMで進められる美少女恋愛ゲームに興じている祥子の背中に目をやり、晴人はため息をつく。そして、前々から持っていたある疑問がまた頭をよぎった。

(課長のこんな姿……、修吾は知ってるんだろうか……知ってるか、付き合ってるわけだし……でも課長、『誰にも言うな』って言ってたしな……)

 

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